口頭内定で退職を伝えるタイミングは?書面・労働条件を確認する順番

在職中に口頭で内定を告げられた人向けに、現職へ退職を申し出る前に確認したい正式な採用意思、労働条件、入社日、社内手続と、無理のない逆算方法を整理します。

執筆・編集 ・

口頭で内定を告げられても、その場ですぐ現職へ退職を伝える必要はありません。まず転職先の正式な採用意思、労働条件、入社日、未完了の手続きを記録に残る形で確認し、自分の入社意思を伝えてから、現職への退職申出日を決めるのが実務上の安全策です。

法律上、口頭だから内定が一律に無効になるわけではありません。一方で、退職の意思表示は後から簡単に撤回できるとは限りません。焦って動くより、戻りにくい退職手続の前に確認できる事実をそろえましょう。

口頭内定で退職を伝えるタイミングは「条件確認の後」

基本の順番は次のとおりです。

  1. 正式な採用決定かを確認する
  2. 労働条件を書面または保存できる電子データで受け取る
  3. 求人票や面接時の説明との差を確認する
  4. 入社日を転職先と合意する
  5. 入社意思を伝え、相手が受領したことを確認する
  6. 現職の契約期間、就業規則、残存年休を確認する
  7. 退職申出日と最初に伝える相手を決める
  8. 社内手続に従って退職を申し出る

これは法律で一律に決められた順番ではなく、初めて転職する人が行き違いを減らすための手順です。採用内定によって契約が成立したかどうかは、通知の内容や会社に残る承認手続、本人の承諾など、個別事情によって異なります。厚生労働省も、採用内定の法的性格は事案ごとに異なると説明しています。

4つの言葉は「文書名」ではなく役割で見分ける

会社によって書類の名称や形式は異なります。タイトルだけで判断せず、何が書かれているかを確認してください。

  • 口頭内定:電話や面談などで採用の意向を伝える連絡方法
  • 内定通知書:会社側の採用意思を示す資料
  • 労働条件通知書:賃金、勤務時間、勤務地などの条件を示す資料
  • 内定承諾:応募者側が入社意思を示す行為

民法上、契約は申込みと承諾により成立し、特別な定めがない限り書面だけが成立要件ではありません。また、労働契約は、働くことと賃金を支払うことについて双方が合意すると成立します。ただし、契約内容はできる限り書面で確認することとされています。民法第522条と労働契約法第4条・第6条を踏まえても、「口頭なら成立」「書面が届くまで不成立」と一律には判断できません。

書面を待つ理由は、内定の有効・無効を形式だけで決めるためではなく、退職前に採用意思と条件を具体的に確かめるためです。

退職を伝える前に確認するチェックリスト

1.正式な採用意思と未完了の手続

口頭連絡を受けたら、採用担当者へ次のように確認します。

内定のご連絡をありがとうございます。現職の退職手続を進める前に、正式な採用決定であること、未完了の手続の有無、労働条件書面の交付予定日、回答期限を確認させてください。

社内承認、資格確認、健康診断など、採用決定に関係する手続が残っているかも聞きましょう。応募経歴は正確に伝え、必要書類は期限内に提出します。現職の顧客情報や社内資料など、機密情報を持ち出してはいけません。

2.入社後の労働条件

少なくとも次を確認します。

  • 雇用主の正式名称
  • 無期契約か有期契約か、契約期間と更新条件
  • 入社日
  • 試用期間と試用中の条件
  • 仕事内容、勤務地、その変更範囲
  • 始業・終業時刻、休憩、残業の有無
  • 休日、休暇
  • 基本給、手当、賃金の締切日・支払日
  • 賞与、退職金、昇給の有無
  • 社会保険、雇用保険
  • 自己都合退職の手続

主要な労働条件は原則として書面で明示され、本人が希望する場合には、保存して書面を作成できるメールなどによる交付も可能です。2024年4月以降は、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示対象です。厚生労働省の労働条件明示の解説と現行ルールの案内を確認材料にできます。

3.求人票や面接説明との差

求人票、面接時の説明、口頭の内定連絡、最終的な労働条件を並べ、各項目を「同じ・違う・未確認」に分けます。

求人情報がそのまま個別契約の内容になるとは限りませんが、募集時に示した条件を変更、追加、削除する場合、会社側には変更内容の明示が求められます。厚生労働省の案内も参考に、違いがあれば退職申出前に理由と最終条件を確認しましょう。

4.入社意思と受領記録

疑問が解消したら、指定期限までに入社意思を伝えます。メールや応募者用システムなど、後で内容を確認できる方法を使い、会社が受領したことも確かめてください。

ただし、「承諾メールを送った日が必ず契約成立日」とは限りません。法的な成立時点は個別事情によって判断されます。

入社日から退職申出日を逆算する方法

「入社日の何日前なら正解」と固定せず、次の順番で日程表を作ります。

  1. 転職先と合意した入社日を置く
  2. 現職の退職日を置く
  3. 退職前に取得したい年休日を所定労働日に配置する
  4. 最終出社日を決める
  5. 必要な引継ぎ勤務日を逆算する
  6. 就業規則上の申出期間を確認し、退職申出日を置く

退職日と最終出社日は別です。退職前に年休を取得する場合、最終出社日の後も退職日までは在籍しています。年休の権利は退職日に消滅するため、残日数だけでなく、休日を除いた取得可能な所定労働日数を確認しましょう。厚生労働省の年次有給休暇の解説も参考になります。

無期契約では、民法上は退職の申入れから原則2週間で終了するとされますが、円滑な引継ぎには就業規則上の手続や予告期間の確認が重要です。有期契約の期間途中では原則として「やむを得ない事由」が必要となるなど、扱いが異なります。厚生労働省の退職に関する解説を確認し、有期契約など判断に迷う場合は自己判断だけで進めないようにしましょう。

当日は誰に、何を伝えるか

最初の伝達先は、就業規則や社内規程に指定された相手を優先します。一般的には直属の上司へ面談を依頼し、その後、指定様式を人事や退職手続の権限者へ提出する流れが考えられます。

面談では、次のように簡潔に伝えます。

一身上の都合により退職したく、お時間をいただきました。希望退職日は○月○日です。就業規則に沿って、引継ぎと必要な手続を確認させてください。

転職先の詳細を必要以上に話したり、虚偽の退職理由を作ったりする必要はありません。退職日、引継ぎ、有給休暇について希望と会社側の手続を確認し、決まった内容は記録に残します。

条件変更や受取拒否で困ったときの確認先

条件が急に変わった、内定の扱いが分からない、退職書類を受け取ってもらえないなどの問題は、契約内容や経緯によって判断が変わります。勤務先の規程と関係書類をそろえ、総合労働相談コーナーへ相談できます。ハローワーク求人と提示条件が異なる場合は、ハローワーク求人ホットライン等も確認先です。必要に応じて弁護士などの専門家へ相談してください。

なお、2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者の雇入れ時には、待遇差の内容や理由などについて説明を求められる旨も追加の明示対象になります。該当する人は、施行後の最新資料を確認してください。

今日できる小さな一歩

まずメモを1枚用意し、「正式採用か」「条件書面の受領日」「未確認の条件」「合意した入社日」「回答期限」の5項目を書いてください。空欄があれば、現職へ退職を伝える前に採用担当者へメールで確認します。

そのうえで現職の雇用契約書と就業規則を開き、契約期間、退職の申出期限、提出先、残存年休を記入すれば、退職を申し出る日を落ち着いて決められます。

← 記事一覧に戻る