退職を引き止められたらどう答える?ケース別の返答例と退職日を崩さない準備
内定後、現職の上司から後任不在、繁忙期、待遇改善、恩義などを理由に引き止められた人向けに、面談前の準備、ケース別の返答例、退職日と引き継ぎの調整方法、記録の残し方、公的相談先を解説します。
退職を申し出た後に引き止められても、その場で相手を説得し返す必要はありません。先に決めておきたいのは、次の4点です。
- 退職意思は固まっているか
- 希望する退職日はいつか
- 日程を調整できる場合、その最終日はいつか
- 退職日までに何を引き継げるか
この4点を短く伝え、面談後に記録を残せば、感情的な押し問答を避けながら協議を進めやすくなります。
面談前に4行のメモを作る
まず、紙や私物のメモに次のように書き出します。
退職意思:変わらない
退職希望日:○月○日
調整できる最終日:○月○日(調整できなければ「なし」)
引き継ぎ:手順書、案件一覧、担当者への説明
続いて、労働条件通知書や雇用契約書で、契約期間の有無を確認します。「正社員」という呼び方だけで無期契約とは判断しないようにしましょう。契約期間と退職に関する事項は、採用時に明示される労働条件に含まれます。また、就業規則で申出先、期限、提出様式も確認してください。厚生労働省のモデル就業規則は規程例にすぎず、自社の規則そのものではありません。
退職のルールは契約によって異なる
期間の定めがない契約では、民法627条1項上、原則として退職の申入れから2週間で雇用が終了します。厚生労働省も、会社が認めない場合を含め、無期契約では退職届などによる申入れから原則2週間後に終了すると説明しています。ただし、就業規則、意思表示の文面や到達時期、報酬形態などの個別事情によって争いが生じることがあります。「正社員ならいつでも一律に2週間で辞められる」と単純化せず、まず自分の書類を確認してください。厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」
期間の定めがある契約の途中では扱いが異なります。民法628条は、やむを得ない事由がある場合の解除を定めています。また、1年を超える有期契約には、契約開始から1年経過後に申し出て退職できる特則がありますが、対象外となる契約もあります。民法、労働基準法
さらに、「退職願」による合意退職の申込みと、一方的な任意退職の意思表示は扱いが異なり、書類の表題だけでなく内容や提出経緯も判断材料になります。退職日が決まらない、有期契約を途中で辞めたいといった場合は、自己判断だけで進めず公的窓口へ相談しましょう。
引き止めへの基本の答え方
共通する返答は、感謝、結論、希望日、引き継ぎの順にすると簡潔です。
お申し出はありがたいのですが、退職の意思は変わりません。○月○日の退職を希望しています。そこまでの引き継ぎは責任を持って進めます。
理由を詳しく追加すると、新しい説得材料を相手に与えることがあります。転職先名や私生活の詳細まで説明する必要はありません。ただし、虚偽の理由を作ったり、現職や応募先に事実と異なる説明をしたりしないでください。
ケース別の返答例
「後任が決まるまで待ってほしい」
後任の採用時期は自分では決められません。退職日までにできる作業へ話を切り替えます。
採用時期までは約束できませんが、○月○日までに手順書、案件一覧、連絡先一覧を作り、指定された方へ説明します。退職希望日は○月○日です。
引き継ぎは円滑な退職のために重要ですが、厚生労働省の解説も、引き継ぎ完了を無期雇用の退職成立要件とはしていません。引き継ぐ相手が未定なら、資料の保管場所と説明可能な回数を上司に確認しましょう。顧客情報や社内資料を私物端末へ移してはいけません。
「繁忙期だから困る」「今辞めると迷惑だ」
影響への理解と、退職の結論を分けて答えます。
繁忙期であることは承知しています。そのため、○日までに優先順位を確認して引き継ぎますが、退職希望日は変更できません。
少しだけ延期できるなら、「調整できる最終日は○月○日です。それ以降は難しいです」と上限を一度だけ示します。応じられない場合は、結論を決めないまま「検討します」と答えないほうが混乱を防げます。
「給与を上げる」「異動させる」
退職意思が固まっているなら、条件交渉には入らずに断ります。
評価いただきありがとうございます。ただ、条件にかかわらず退職の意思は変わりません。
本当に残留を検討する余地がある場合だけ、その場では回答せず、金額、職務、役職、勤務地、開始日、適用期間、承認者を文章で確認します。労働条件の変更は労使の合意によるもので、口頭提案を聞いただけで確定するとは限りません。労働契約法は、契約内容をできる限り書面で確認するものとしています。労働契約法
本日は回答せず、変更内容と開始日、職務、承認者が分かる形で確認してから返答します。
「お世話になっただろう」「仲間や顧客を置いていくのか」
感謝は伝えつつ、罪悪感の是非を議論せずに決定を繰り返します。
お世話になったことには感謝しています。そのことと今回の決定は分けて考えており、退職の意思は変わりません。退職日まで必要な引き継ぎを進めます。
相手の感情を否定する必要も、人手不足の責任を自分だけで背負う必要もありません。
面談後は事実を記録する
面談が終わったら、日時、参加者、自分が伝えた退職意思と希望日、会社の回答、次の手続き、引き継ぎ項目を記録します。厚生労働省も、誰に、いつ、何を言われたかが分かるメモやメール、労働条件通知書、就業規則などの保存を相談準備として案内しています。厚生労働省「解決に向けた相談の準備」
必要なら、次のような確認メールを社内ルールに沿って送ります。
本日お伝えしたとおり、○月○日付での退職を希望しています。退職日までにA・B・Cの引き継ぎを進めます。本日、会社からはDとの説明がありました。次回の確認事項はEです。
評価や批判は書かず、事実だけを簡潔に残します。記録のためであっても、会社の機密情報を私物端末へ持ち出さないでください。
話が進まないときの確認先
退職届を受け取ってもらえない、退職日が決まらない、威圧や不利益を示唆された、有期契約の途中で辞めたい、損害賠償を示唆された場合は、就業規則上の提出先を確認したうえで、人事や経営者への書面提出と公的窓口への相談を検討します。
総合労働相談コーナーは、幅広い労働問題を無料・予約不要で相談できます。2026年度の労働条件相談「ほっとライン」は無料・匿名で、日本語窓口は0120-811-610、平日17時~22時、土日祝9時~21時です。受付時間などは更新される可能性があるため、利用前に公式ページを確認してください。
今日できる小さな一歩
まずは「退職意思・希望日・調整できる最終日・引き継げること」の4行を書いてください。次に契約書と就業規則を確認し、想定される返答を一度声に出して読みます。
無断欠勤や引き継ぎ放棄ではなく、明確な意思表示、記録、期限を区切った協議で進めることが基本です。法令や行政手続き、雇用条件の扱いは、契約、勤務先の規程、個別事情によって異なります。本記事の法令・窓口情報は2026年9月20日時点の確認内容であり、迷う場合は最新の公式情報と公的窓口を利用してください。